紅葉する樹木あれこれ
「もみじ」は、紅葉する樹木全般を指します。
万葉時代までは「黄葉」を意味していたそうです。
気象庁で発表する「紅葉前線」は「イロハカエデ(紅葉)」と「イチョウ(黄葉)」を指標にしています。全体に色がついた日を紅葉日、80%が落葉した日を落葉日と呼びます。
最低気温が7℃以下になると色づき始め、その3週間後が最も美しいといわれています。
今回は、紅葉(黄葉)する樹木をいくつかご紹介します。
【イロハモミジ(赤・オレンジ)】
イロハモミジは本州から九州、朝鮮半島、中国、台湾に自生するカエデ科の落葉高木です。
ヤマモミジ、オオモミジ等いろいろありますが、この「イロハモミジ」は日本に自生するカエデの仲間では最もよく見る種類です。
万葉集や源氏物語などに登場し、古くから親しまれてきました。
「紅葉(モミジ)」という言葉は、一般的にこのイロハモミジを指します。
和名の「イロハモミジ」は葉を手のひらにたとえ、「いろはにほへと・・・」と数えたことに由来します。
また、花や実も楽しむことができる万能選手。
庭木にも好まれて植栽されています。
新緑の季節に赤い実がなり、緑と赤のコントラストが美しくよく目立ちます。
イロハモミジは葉にできた糖分が多いほど葉っぱが真っ赤に染まります。
紅葉の時期に日中が暖かく、夜冷えるような日が続いたときは、真っ赤な紅葉が楽しめます。
寒暖の差がポイントとなりますね。
【イチョウ(黄)】
その起源は古く、今から1億5千年まえのジュラ紀に全盛を誇った植物です。
氷河期にも絶滅しないで今に至っているため、「生きた化石」とも呼ばれています。
現在は中国と日本にしか分布していません。
針葉樹でも広葉樹でもなく、他に親戚のない、一科一属一種の樹木です。
切れ込みのある扇形の葉が特徴です。
雌雄異株で、花は5月ごろ葉の根元に小さく咲き、9月ごろには雌のイチョウに実(ギンナン)がなります。実はおいしく、茶わん蒸し料理には欠かせません。
街路樹に植えられているのは大半が雄株です。
ちなみに、神宮外苑の絵画館前のイチョウは、新宿御苑にあった親木から採取したギンナンを育てて植えたものです。
イチョウは、新緑、黄葉、落葉と季節ごとに姿を変え、存在感があります。
最も美しいのが晩秋の黄葉。歩道を黄金色に埋め尽くし、日本の秋を彩ります。
【ラクウショウ(赤褐色)】
北アメリカ原産の落葉針葉樹の高木。
大きなものでは高さ50m直径3mにもなります。
幹は空に向かって真っすぐ伸び、縦に裂け目が入ります。
秋には黄色から赤褐色のレンガ色になります。
綺麗に紅葉している期間は短く、あっという間に落葉してしまいます。
タイミングよく紅葉が見られると巨木の迫力もあり感動するでしょう。
ラクウショウは別名「沼杉(ぬますぎ)」と呼ばれており、ジメジメした沼や湿地を好んで生育しています。
そのため酸素が不足し、それを補うために気根(膝根)と呼ばれる根っこが地面から突き出して呼吸をしています。
新宿御苑のラクウショウはこの気根がまさにニョキニョキと突き出し、なかなか見られない独特の景色を作り出しています。
同じ落葉針葉樹のメタセコイアとは似ていますが、葉がラクウショウは互生、メタセコイアは対生で葉が長いので区別ができます。
【メタセコイア(赤褐色)】
原産は中国。
1943年に中国四川省で発見されたときは「生きている化石」として一躍有名になりました。
同じ落葉針葉樹のラクウショウと姿は似ています。
見分け方はがラクウショウの葉は互生、メタセコイアは対生、葉の長さもメタセコイアの方が長いです。
メタセコイアは成長すると20~30m(ビルの高さ約8階分)にもなります。
すーっとまっすぐ伸びたきれいな円錐型の樹形です。
その端正な樹形や並び立つ姿から遠くでもよく目立ち、すぐにわかります。
メタセコイアは四季折々の葉色が美しく、1年を通して楽しませてくれます。
初夏の新緑は柔らかい緑色、
紅葉の時期になると緑から黄色、赤褐色のレンガ色に変わります。
華やかな紅葉というよりは癒しの紅葉と言えますね。
冬の雪化粧もまた美しく、他の樹木は一味違った景色を作り出します。
【ハゼノキ(赤)】
東南アジアから東アジアの温暖な地域に自生するウルシ科ウルシ属の落葉高木。
ウルシ科の樹木は紅葉がとても鮮やかで1本でも見応えがあります。
11月中旬から12月上旬にかけて、葉が緑から赤に変化していく様子はとても美しいです。
光沢のある葉は秋には燃えるような鮮やかさで紅葉します。
果実は脂肪分が豊富で野鳥の大好物。
またこの果実はロウの原料になることから、「ロウノキ」とも呼ばれています。
樹液はかぶれやすいのでご注意を。
- 清澄庭園